この時期、蕎麦農家としては休耕期となります。雑草も伸びませんし、一年で最も平穏な日々です。私も少し気を抜ける時期で、体への負担が減り助かります。
しかし、この時期には、できれば実施したい作業があります。それは「寒起こし」と呼ばれる、冬の寒さを利用した天然の土壌消毒と雑草対策です。作業自体は、トラクターで畑を耕起するだけですが、寒い冬にやるから意味があります。
寒起こしの効果：自然の力で質を高める
耕起した土を霜にさらすことで、土の中に隠れている病害虫を退治できるのです。また、雑草の根を枯らす効果もあります。農薬ほどの確実な効き目はありませんが、ある程度の効果は期待できます。効果は薄くとも、食の安全を考えたらこれが一番で、無農薬はうちのポリシーです。
さらに、土の中に含まれる水分が夜に寒さで凍り、日中には表面が溶けて乾燥することを繰り返すことで土の水はけや通気性が良くなり、土作りとしても効果が期待できます。
この作業は、できれば本格的に冷え込む前に終わらせてしまいたいところですが、なかなか思うようにできません。毎年10月下旬からから11月下旬にかけての収穫作業が終わりますと、待ったなしで年末の繁忙期に向けて忙しく毎日を追われていきます。
年が明けると力尽きて体調を崩し、長期休養するのがお約束となっています。さらに確定申告という大仕事もあり、気づけば春の声が聞こえ始め、また今年も寒起こしが間に合わなかった、なんてことになりがちです。
しかし最近、お客様から
「これまで80年以上生きてきて、これほど美味しい蕎麦は食べたことがない、ありがとうございました。また寄らせてもらいます。」
と言ってくださり、更には深々と頭を下げてお帰りになられました。これには私も嬉しいを通り越して大変恐縮してしまいましたが、その時思いました。「手間を惜しんではいかん」私の蕎麦がこんなにも喜んでいただけるのですから。
これまでのところ、まだ3、4箇所の畑でしか作業を進められていませんが、できるだけ頑張ります。今日もありがとうございます。
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