今年の夏は異常だ。ここ何年も、夏が来るたびに言われています。そして毎年、前年の暑さや雨量の記録が更新されていく印象です。今年は穏やかな気候の静岡でも、とうとう気温が40°を超える日が続くようになってしまいました。
そんな昨今、日本の主食である米不足の問題が表面化し、価格が高騰しています。
ここにきて、行政もようやく米の増産に取り組むようなことを言っているようですが、その道のりは大変険しいものであると思えてなりません。
農業の現実と4つの壁

まず立ちはだかるのは、耕作放棄地の問題です。長い間放置された農地は、かつてきれいな田畑だったことが信じられないほどの荒れようです。草がはびこるのはもちろん、鳥の糞を介して落ちた樹木の種が芽生え、あっという間に数年が経ち、知らぬ間に雑木林となってしまいます。これを農地へと再生するには、かなりの時間と労力が必要となります。そんな耕作放棄地が、至る所にたくさんできてしまっているのです。
では、なぜそんなことになってしまうのかというと、農業は利益が出にくいからです。近年は追い打ちをかけるかのように、種代や肥料代、燃料代なども高騰しています。作物によっては、ある程度の利益を見込めるものもあるのでしょうが、それでも手間や経費に対して見合うものかというと、なかなかそうはいえません。
それから、作業に必要な機械の値段がとても高いのが大問題です。農機具の多くは、年に数回しか使いません。しかし、用途に応じていろんなものを一通り揃える必要がありますが、小規模農家がこれら機材を購入することはとても高いハードルとなります。レンタルや共同購入すれば経済的負担が軽くなるのでは、との案もありますが、これらの機材は誰もが同じ時期に使用したいため、使いたい時に使えない、という問題が発生するため、現実的ではありません。そのため、やはり各個に機械を揃えなくてはなりませんが、採算の目処は立たないため、先祖代々受け継いだ農地を泣く泣く耕作放棄する要因です。
加えて、人件費と人材確保の難しさも深刻です。作業効率や投資効率を上げるためには、ある程度の大きさの規模が必要となります。規模が大きくなれば、人手が必要となりますが、農業の難しいところは作付け時や収穫時にはとても多くの作業がありますが、中間期はそれほど多くの作業がないことです。安定的に人材を確保するには、常勤で雇い入れることが不可欠ですが、年間を通じて毎日を賄うだけの仕事がないのです。そのため繁忙期は臨時雇用で、となりますが、ただでさえ人手不足が問題となっている昨今の状況では人材確保も容易ではありません。
多品目の作付けをすることで、年間を通して途切れることなく作業を確保できるかもしれませんが、必要とされる栽培ノウハウや機械設備も増えるため、少なくとも今の私には実現可能とは思えません。
ですから、私が思うに、急に米を増産しますと言っても、すぐ実現するものではないのです。
私は稼げる農業を目指して、蕎麦の栽培から加工・販売までを一貫して行なっていますから、ただ作物を作って売るより利益があります。しかし、私には潤沢な資金があったわけでも売り上げがあったわけでもありません。蕎麦栽培を始めるにあたりは、収穫機のコンバインと乾燥設備だけは誰にも借りることができないため購入しましたが、その他トラクターなどの機械は何年も購入できませんでした。
農業をやるのにトラクターがない。ないからトラクターの作業は持っている人にお願いしてやってもらう。でも作業料を払うお金がないから、労働で返す。トラクターで1時間ほどの作業を、私の1日の労働と交換です。そんなことが何年も続きました。思い返すと惨めな思いがしますが、あの頃はとにかく必死でした。
お店を持って少しずつ収入が増え、ようやく中古のトラクターを買うことができた時は心底嬉しかったのを思い出します。その後、肥料散布機や大型の草刈機などの機材も、中古ですが数年かけて少しずつ買い足してきました。それでも未だに足りない機械があります。そうしているうちにも、今あるものが壊れ、代替えや修理が追い打ちをかけるように必要となってきます。相変わらずやりくりの悩みは尽きません。
輸入依存の危うさと食の未来への不安

さらに最近私には、もう一つ大きな悩みというか心配があります。それは、近年の異常気象や社会情勢により、これまでのように輸入に頼っていては、他の食べるものもなくなってしまう、という心配です。ですから、これら農業の抱える問題をなんとか克服して生産量を上げる方法はないものかと考えます。
しかし、現実には心配とは裏腹に、日々の仕事に追われるばかりで、なかなか向き合えません。手遅れとなる前に、知恵を絞ってもっともっと日本の農業を盛り上げていきたいものです。また近々、得意の神頼みに伺わなければなりません。
今日もありがとうございます。
(LINE友だち登録のお願い)
亮月では蕎麦に関する知識や私の想いを発信しています。また、LINEの友だち登録をしていただくと、営業時間変更のお知らせや最新情報の確認ができますので、ぜひ登録していただければと思います。
