亮月店主鈴木亮司

亮月を支える製麺の裏側

「そばの香りが高く、腰のしっかりとした喉越しの良いツルッとしたそば」

これが、私が理想とするそばです。

今回は亮月のそばを支える製麺機についてお話します。

製麺機の種類

製麺後のそば

製麺機と一口に言ってもいろんな種類があります。作業の高効率化と省力化が製麺機の基本性能ではありますが、それに加えて機種により特徴があります。私の知る限り3種類です。

  • 押し出し式
  • パスタマシン式
  • 手打ち式

どの製麺機も捏(こ)ねの工程はミキサーが担い、捏ねの工程が終わったところから機種ごとに特徴を発揮します。

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10割そばは押し出し式

押し出し式は、10割そばのお店でよく見られます。原理は、注射器と同じです。捏ねた生地を円筒の中に入れ、ピストンで押し出します。出口にはたくさんの四角い穴が空いていて、そこから麺状になって出てきます。10割そばはとても切れやすいのですが、この製麺機を茹で釜の直上に置いて、製麺と同時に茹でることで切れない10割そばを作ることができます。

このタイプは練りの工程はありません。そもそも、10割そばに練り工程は必要ないのかもしれません。なぜなら、そば粉は小麦粉と違ってグルテンが含まれていないので、いくら練っても腰や粘りが出ないからです。故に10割そばはとても切れやすいのです。またこのタイプは、狭い穴から麺を無理やり押し出すため、麺が角がささくれてギザギザになる傾向があります。反面、ちぢれ麺のようにツユの絡みは良くなります。

高効率のパスタマシン式

パスタマシン式は、そば粉を捏ね終えたら延ばし工程です。そば打ちの経験のある方ならお分かりかと思いますが、捏ねた後の生地はまだ細かい塊りでボロボロです。このボロボロのものを延し機(2本のローラーの間の隙間を通す)に入れて一枚の長い帯状の生地にしようとしても、一度の工程では穴だらけとなってしまいます。

そこで穴だらけの生地の端と端を合わせて二つ折りに重ねてまたローラーに通す、これを繰り返すことで穴のない綺麗な生地が出来上がります。狭いローラーの隙間を通ることで圧力が掛かるので、練りの要素がないわけではありません。生地に掛かる圧力がローラーの回転方向の一方向なので、十分に練れているとは言い難く、そば粉の比率が高いそばは生地の強度が弱く切れやすく苦手とします。

この機械の最大の特徴は切刃にあります。2本の細かい凸凹状の溝があるロール状の刃を互い違いにセットして、その隙間に生地を通すことで切れていきます。家庭用のパスタマシンの強力版です。とにかく切るのが早く、あっという間にたくさん切ることが出来ます。

亮月は手打ち式

最後は、私の店でも使用している手打ち式です。こちらのタイプは手打ちと同じように、

  • 捏ね
  • 練り
  • 延し
  • 切り

この工程を機械でやります。まずはミキサーでそば粉と水を捏ねます。捏ね終わった団子状の生地はプレス機に掛けます。団子状から一枚の生地になったら、上下から半分に折り返して再度プレスします。今度は左右から半分に折り返してプレス。これにより、縦横いろんな方向へ圧力が掛かり、しっかりと鍛え上げられた腰の強い生地が出来ますので、二八そばのようにそば粉の比率の高いそばも打つことができます。

製麺機で製麺したそば生地

ちなみに、このプレス機の力はなんと1tもあります。

次は生地を2本のローラーの隙間を通す延しです。ローラーの隙間を少しずつ狭くし、生地を徐々に薄く延ばしていきます。最後に延ばし終えた生地を畳んで切ります。機械で切りますが、包丁で一本一本切ります。ちゃんとした刃物で切りますから、角のしっかりしたキレイなそばです。

唯一の弱点としては、手打ち式が一番効率の低いタイプとなります。

手打ち式の理由

まとめますと、手打ちの場合、そば打ちは概ね、捏ね・練り・延し・切り、の4工程となります。このうち、押し出し式は捏ねの後すぐに麺になります。パスタマシン式は捏ね・延し・切りの3工程で製麺されます。手打ち式は手打ちと同じ4工程を経てそばができます。ですから、機械打ちと聞かなければ、手打ちと見まごうような仕上がりです。

亮月のそば作りへのこだわり

亮月店主鈴木の笑顔

10割そばは、聞けば響きも良くとても魅力的ですが、私はボソボソした食感より、ツルっとした喉越しのそばが作りたかったのです。また、そばの香りが高く、腰のしっかりとしたそばを作るには、生地をしっかりと練らなければなりません。

当店のそばは、そば粉が8割ですが挽きたてを使うことで、10割そばにも負けないような香りを、つなぎに2割の小麦粉を入れることで食欲がない方でもツルッと食べられるように、腰の強いそばは噛むごとにほんのり甘みを感じられるように、そんなこだわりそばを打つための、こだわりの製麺機です。是非、亮月のそばを味わってみてください。

【つゆへのこだわり】そばつゆも一切妥協しない

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