毎年9月から10月が蕎麦の花の見頃となります。
無事に発芽して、畑一面に広がる満開の花が広がる風景は綺麗で可愛いくて仕方ありません。この時ばかりは、台風やらの心配もどこへやら、手放しに喜びを感じます。
満開の花は愛でるだけでも幸せで楽しい気分にしてくれます。
しかし、私は蕎麦農家です。いわゆる蕎麦のプロフェッショナルですから、花の魅力だけには留まらないもっと深い魅力を皆さんにお伝えいたします。
朝、蕎麦の花が満開の蕎麦畑に立ちますと、周りには嫌な匂いが立ち込めます。平たく分かりやすく言いますと、俗にいう下の系統の臭いです。これこそが蕎麦の花の匂いなのですが、見た目が美しいだけにとても残念です。
蕎麦の花の特徴
そんな見た目が綺麗だけど、臭いが残念な蕎麦には2種類の花があります。長柱花と呼ばれる雌シベが長く雄シベの短いタイプと、短柱花と呼ばれる雌シベが短く雄シベの長いタイプの2種類です。それぞれ花は株ごとに分かれて咲きます。一つの株には、長柱・短柱の花が混在することなく、一つの株にどちらかの種類の花だけが咲きます。長柱・短柱の割合は、概ね5割ずつと言われていますが、タネの外観には何も違いはなく、花が咲いて初めて分かります。
どんな植物でも、その実を付けるには雄しべから雌しべに受粉が必要となります。
大体の花は、一輪の花の中で受粉が完了するのですが、蕎麦は少し特殊な受粉システムとなっています。なんと、長柱花は短柱花の花粉でしか受粉できず、短柱花は長柱花の花粉でしか受粉できないのです。木で例えるなら、離れた木の違う花同士でしか受粉できないのです。
蕎麦には欠かせない昆虫の働き
さてどうしましょう。花は動くことはできないので自力で受粉することはできません。そこで蕎麦は、蜜を対価にして花粉を虫たちに運んでもらうことにしたようです。
実はさっき、残念と言った匂いはたくさんの虫たちを集めるために、そして朝匂うのは、虫たちが活発に動き始める時間帯にこそ放つのです。「ここに美味しい蜜がありますよっ!たくさん集まってくださいっ!」と。そしてその匂いは虫たちにとって美味しくてたまらないご馳走蜜の匂いなのです。
先程、ご馳走蜜と書きましたが、実際、蕎麦蜜は蕎麦の実と同様に栄養価が高く、滋養も強いので、虫たちにとってもとてもいいものです。蜂たちにとって晩秋に採れる蕎麦蜜は、寒く厳しい冬を越すための貴重な食料となります。
また当店では、無農薬で栽培してますから、虫たちにとっても安心安全の健康食品です(笑)
蜜を求めて集まった虫たちは、花の中に頭を突っ込みます。すると頭の辺りには短い雄しべの花粉が、お腹の辺りには長い雄しべの花粉が付着します。そうして頭についた花粉は短い雌しべに付着します。お腹に付いた花粉は長い雌しべに付着します。
こうして虫たちが、花から花へと行き来することによって長・短柱花の間でめでたく受粉でき実をつけた結果、私たちは美味しい蕎麦をいただけるわけです。
亮月で自然の恵みを堪能してほしい
説明が前後して分かりにくかったかもしれませんが、麺となって私たちの口に入るまでに、実はこんなにも感動的な自然の営みがあるのです。蕎麦ってこうして出来上がるんだ、とお分かりの今、また格別な味わいを感じていただけることと思います。
是非、亮月で大自然の恵みをお楽しみください。
ちなみに蕎麦の蜂蜜は、他の蜂蜜と比べても栄養価が高めで、人間にとっても滋養の強いものです。混ぜ物の少ない純度の高い蕎麦蜜は、黒褐色で黒蜜のような色です。匂いは…まるで馬小屋のような匂いです。味はいいのですが、クセが強いので好みは分かれるところです。
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