春の到来と共に、今年も当店の蕎麦作りが始まりました。と言っても種蒔きシーズンには程遠く、雑草との戦いの火蓋が切って落とされた、と言ったところです。現在は今年初の草刈り作業にとりかかっている真っ最中。またこれから忙しくなります。
土作りは蕎麦作りの第一歩
さて、ご存知の方も多いと思いますが、亮月の蕎麦作りは土作りからスタートします。以前は、春蕎麦と秋蕎麦の年に2回、栽培していたこともありましたが、現在は秋蕎麦一作に全集中しています。
ここ静岡県丹那地区では、8月下旬あたりが種蒔きシーズンとなりますので、その間はもっぱら土作りに専念することとなります。その気になれば、一年中畑を遊ばせることなく何かを作ることもできますが、当店の場合は1年のうち2ヶ月ほどしか作りません。一見、残りの10ヶ月は遊ばせているようでもったいない気もします。しかし、私はこの間、畑が荒れないように蔓延る雑草を刈りながら、畑にしっかり休んでもらっている感覚でいます。
種蒔きまでに何度も刈る草は、風雨にさらされることで分解され、緑肥となって畑に蓄積されていきます。天然の堆肥です。夏まではひたすら、じっくり畑を休ませつつ土を作る。そう言いますと、なんだか大袈裟でこじつけのように聞こえるかもしれません。しかし、畑で作物を育てるということは、地力を吸い取るということです。ですから、畑も人間と同じように休み、地力を養うことがとても大切だと考えています。
もしかしたら、他にもっといいやり方があるのかもしれませんが、これが私のこれまでの経験から辿り着いた、現時点でのベストなのです。
出雲の旅で出会った「御砂」の力

そんな今年の土作りには、実はちょっとした”強力な助っ人”をお願いしています。
先日の出雲の旅で、出雲大社の御砂(ごすな)をいただいてきました。これは、出雲大社近くの稲佐の浜で採った砂を、大社内にある素鵞社(そがのやしろ)の床縁下にある砂箱の砂と交換することでいただける砂です。これはお清めの砂と呼ばれ、家の周りに蒔けば邪気を祓い幸福を招き、そして田畑に蒔けば作物がよく育つとされています。
この砂のことは、私も出雲を訪れるまで知らなかったのですが、作物がよく育つと聞けば、いただかずにはいられません。戻って早速、大小あちこちに点在する畑に漏れなく蒔いてきました。
もちろん、大量にいただけるものではありませんので、各所にほんのひとつまみずつです。余談ですが、私は罰当たりにもこんなに少しの砂で大丈夫かとついつい心配になってしまいました。肥料を蒔く感覚からすると、ひとつまみの砂などあまりにも少ないのですから。いかにも浅い、と自分で自分に苦笑する始末です。
近年、温暖化の影響で夏は酷暑が続き、秋になっても涼しくなりません。そしてろくに秋を感じぬまま急に冬がやってくる、そんな印象です。当然、蕎麦栽培にも悪影響が出ています。いろいろ考えると心配が尽きません。そんな昨今だからこそ、土作りがより大事な気がします。
暑さにも負けない環境作りとでも言うのでしょうか。
美味い蕎麦のため、いいと思ったことはなんでもやっていきます。そして、その時それまでにできることを尽くしたら、最後は神頼みです。今年は出雲の神様のお力を貸していただきます。
いよいよ畑仕事も新しい年の始まりです。また、今年の試行錯誤の始まりでもあります。まだしばらく先のことではありますが、どんな蕎麦ができるか秋の収穫が楽しみです。
今日もありがとうございます。
<P.S>
畑だけを考えれば、年にたった2ヶ月のために手をかけ続けるのは、なんとも贅沢で、もったいないようにも思えてきます。それでも、より美味しい蕎麦を目指して、これからも試行錯誤は続きます。
理屈っぽく聞こえるかもしれませんが私は、そんな感覚でこの蕎麦作りに取り組んでいます。
(LINE友だち登録のお願い)
亮月では蕎麦に関する知識や私の想いを発信しています。また、LINEの友だち登録をしていただくと、営業時間変更のお知らせや最新情報の確認ができますので、ぜひ登録していただければと思います。
