蕎麦畑で作業する鈴木代表

自然は敵か、恵みか ― 台風と猪の季節に思うこと

早いものでもう10月です。10月といえば、私の感覚的には台風シーズン。
前回のブログでも書きましたが、台風がもたらす強力な風雨で蕎麦が倒れてしまい、収量は減る、作業は難航する、でガッカリすることばかりです。
昔の人は台風を「野分」(のわけ・のわき)と呼んでいたそうです。意味は読んで字の如くですが、荒ぶる神の仕業と大変恐れていたそうです。あらゆる技術が発達した現代でも、その威力は凄まじく、未だ人間に台風の被害を避ける術はありません。詰まるところ、来るものは来ますし、来たところでどうにもなりませんから、気を揉んでも仕方ありません。

自然と人の境界線


それから、農家の抱えるもう一つの問題が獣害です。昨今、ニュースでも熊による事故が連日のように報道されています。幸い私の地方では、熊の目撃情報はありませんが、猪には毎年悩まされています。こちらは、ある程度人の手で予防ができますので、できるだけのことをやります。まず土手や畑の周りの草刈りです。
これには、ここは人が管理する領域ですよ、と知らせる意味があります。しかしながら、効果は非常に微力で、気休めと言った方がいいかもしれません。
次に本命の電気柵です。畑の周りに何本も樹脂製の支柱を立て、そこにナイロン製の電線でグルッと畑を囲うというものです。そこへバッテリーや乾電池式のパワーユニットを付けて電気を流すことで柵の完成となります。猪避けの場合は、5メートル間隔で支柱を立て、電線を2段設置します。

私は全部で約4haの畑で蕎麦を作っています。実際には複数箇所ですが、これが一枚の畑だとすると200m×200mの広さとなり、支柱は160本、電線は800m×2段で1,600m必要となります。しかし、私の畑は何ヶ所にも分かれていて囲う辺が増えるため、多分支柱も電線もこの倍くらいは必要となります。畑の脇まではもちろん軽トラで運びますが、以降は支柱を持てるだけ抱え、地面に仮立てして周り、支柱のお代わりを取りに畑の外周をグルッと回って車へと戻る、を繰り返します。その後、リールに巻きつけた電線を張りながら、支柱をしっかりハンマーを使って地面にしっかり打ち込んで行きます。果たして、全部終えるのに何キロ歩いたらいいのでしょうか、と言いたくなる作業です。ダイエット希望の方いらっしゃいましたらぜひお声がけください。

1日の歩数は約9㎞に及びました

ところでこの柵には、おおよそ3,000V〜6,000Vの電流が一定の間隔ごとに流れています。数字だけを見ると、感電死するのでは、と心配になりますが、水中で感電しない限り心配ありません。電線に触れるとパチっと痛みと衝撃を感じる程度です。ただし、なかなかの衝撃です。私も柵の設置後に電気の導通チェックをしているうちに、うっかり触れてしまうことがあります。そのうっかりをかなり後悔するくらいの威力はあります。
猪は、鼻で安全や餌の在り方を探りなら行動します。この電撃を柔らかく敏感な鼻の粘膜に喰らったら、その畑に近寄れなくなるのは必至というものです。ただし、鼻で触れてくれればの話です。体が柵に触れた程度では大したダメージはないようです。実際、電気柵を設置しても絶対に猪が畑に入らないという保証はありません。
また猪が入った後に、柵を設置しても効果がないようです。一度来たところは安全、という認識なのでしょうか、構わず入ってくるような印象です。ですから、電気柵は入られる前に設置する、が鉄則です。

自然と人、共に生きるということ

年々、少しずつ電気柵を設置しなければいけないところが増えている印象です。熊もそうですが、最近はどんな野生動物も餌を求めてどんどん人里にやってきてしまっています。それもこれも山に食べ物がないからです。深刻にないんだと思います。ネットに記事がありましたが、今年の夏の暑さでドングリなど山の実りがものすごく凶作となっているそうです。ですからこんなに頻繁に食べ物を求めて人里にまで来てしまうわけです。

このままでは、いつか人間も食べるものがなくなってしまう日が来るかもしれません。またしても、自然との在り方を見直さなくてはならないと強く感じてしまいます。
古来、豊作と無事を願い神仏に祈りを捧げたように、私も今は祈ることくらいしかできませんが、なんとかしたいものです。
みなさんも畑に電気柵を見かけたら、うっかり触れることがないようお気をつけください。今日もありがとうございます。

<関連>蕎麦になるまでの自然界のプロセス

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