亮月外観

ご夫婦との時間が教えてくれた、蕎麦職人としての誇り

当店は、20席ほどの小さな店ですが、年間トータルしますと約10,000人のお客様にご来店いただきます。最近、顔馴染みのお客さんも増えましたので、わずかな時間ですがお話しできる機会も増えました。短い時間ですが、楽しいひとときです。ですから、馴染みのお客さんがしばらくいらっしゃらないと元気にしていらっしゃるかと気になります。

以心伝心とでもいうのでしょうか、そんなことを思うと数日のうちにいらっしゃる方も少なからずいます。お会いできれば安心できるのですが、残念ながら中にはお亡くなりになられていることもあり、大抵は奥様から「先日主人が亡くなりました」とお知らせいただきます。

お客様から学んだ「日々の価値」

これまでに、特に私の印象に残っているご夫婦がいらっしゃいます。そのご夫婦は、いつの頃からか週一くらい通ってくださるようになり、ご主人はいつも決まって冷酒と蕎麦をお召し上がりになります。そして食事中は、ご夫婦そろって笑顔が絶えることなく、とても楽しく幸せそうにされていました。そしてその笑顔は絶えることなく、最後はお二人ともニコニコ顔で「美味しかった」と言ってお帰りになられていました。「歳をとってもこんなに仲が良いなんて素敵なご夫婦だな」と憧れすら感じたほどです。

そんなお二人でしたが、いつしかお姿を見かけなくなりしばらく経った頃、奥様が一人でお店にいらっしゃいました。一人なんて珍しいこともあるもんだと思った矢先、「先日、主人が亡くなりました」とお知らせいただいたわけです。失礼ながら、そう聞くとお二人があんなにも楽しそうにしていたのがものすごく腑に落ちてきます。きっとお二人ともご主人の先が長くないことを知っていたのでしょう。それなら残りの時間を楽しく仲良く過ごそうと決められてたんだな、と思いました。

とはいえ、それは簡単なことではありません。そのようにできる方は多くないように感じますし、私もにわかにそうできるとは思えません。きっと多くが悲嘆に暮れ塞ぎ込んでしまうのではないでしょうか。

お客様からの「ありがとう」が私の力に

蕎麦畑周辺の草刈りをする亮月店主の鈴木

訃報に際しましては、ありがたいことに皆さま一様に「美味しい蕎麦をありがとうございました。大変お世話になりました。」と言ってくださいます。そう聞くと、私としても自分の蕎麦にものすごく特別なものを感じ、勇気づけられます。そんな蕎麦を作れるのだから、自分を卑下してはならぬ、落ち込んではならぬ、自信を持て、そう思うことができます。ですから「どちらかというとお世話になったのは私の方なのに」と思います。しかし、私はこういったことを忘れやすいの人間なのが残念です。

さて、こうして色々考えてみますと、私は実にたくさんの人に応援してもらっているんだと改めて気付かされます。年間約10,000人。今年で開店して9年が過ぎましたから、これまでに約90,000人の方に応援していただいたことになります。
改めて事の大事に気付かされます。私もこのご夫婦のように日々を大切に過ごしていきたいものです。今日もありがとうございます。

余談ですが、こちらの奥様、ご主人が亡くなられた後、離れて暮らしていると思われる息子さんとそのご家族を伴ってご来店くださいました。「お父さんが大好きだったお蕎麦屋さんだよ」とご紹介くださいました。
ジーンとしてしまいました。

<関連>蕎麦が繋ぐ幸せな縁

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