そばつゆとは醤油、砂糖、みりんで作った「返し」と「出汁」を合わせたものです。このつゆがそばの味の決め手と言っても過言ではありません。雑な言い方ですが、そばが少々不味くても、つゆさえ良ければお美味しく食べれてしまいます。逆にそばは良くてもつゆが不味いとせっかくのそばが台無しになってしまいます。
お恥ずかしい話ですが、私はそば屋はおろか飲食店の経験はありませんでしたので、当初は思うような味がなかなか作れず、随分と悩んだものです。
旨味を引き出す昆布と鰹の合わせ出汁
ところで、一般的なおそば屋さんといえば、鰹のみで出汁を取るそうですが、私は開店当初より昆布と鰹の合わせ出汁を使うことにしていました。というのも、いつか観たテレビで、鰹に含まれるイノシン酸と昆布に含まれるグルタミン酸が合わさることで相乗効果が生まれ、より旨味が増すと聞いたからです。
しかしこの時、合わせ出汁がより難易度を上げるとは知りませんでした。単一の材料で出汁を取るなら、単純に濃度だけを詰めればいいのですが、合わせ出汁となると、濃度に加えて配合比率も詰める必要があります。なんでも入れればいいわけではなく、バランスが命なのです。当然、当時の私がそのことを知るはずがありません。
試行錯誤で生まれた亮月特製のつゆ
最初はただ鰹と昆布を混ぜ合わせれば美味しくできると信じきっていました。濃度はネットで調べて何度か試作して◯%に設定しましたが、鰹と昆布の配合比率はいわゆる適当でした。当たり前ですが、バランスは完全に無視して作っているわけですから、美味しいはずがありません。自分も美味しくないのは分かっているのですが、どうしたら美味しくなるかさっぱり分かりません。すると次に素人考えでやることは、素材はいいのだから多く入れて濃くすれば美味しくなるかも、となります。
浅はかすぎますね(笑)
結果は言わずもがな、余計に不味くなりました。いよいよ行き詰まりとなり、頭を抱える日々が続きましたが、ある日、昆布と鰹の出汁を個別に取ってみようと考えつきます。
するとどうでしょう。両者の味を知ることで、今まで不味いと感じたものがなんだったのかが見えてきました。そう、バランスです。私の場合は、昆布が強すぎたのです。それからは少しずつ昆布を減らして味を見て、もう一度増やして味を見て、微調整を繰り返します。それほど微妙な量で味が変わるものだったのです。そうこうしながら、ようやく味のバランスが整い、今のつゆのベースが完成しました。
その後、何度か改良をして現在に至ります。
改良の度にこれ以上はもうないぞと思います。でも不思議なことに、もっと良くしたい、という意識を持っていると、時々フッと新たなアイディアが浮かんでくるものです。
これは何事にも共通することだと思いますが、より良いものを、その意識を持ち続けることがとても大切なんだとつくづく感じます。
今日もより良いものを。
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