10kgの収穫と、今年得たもの – 2025年の蕎麦作り

順調だった前半。静かに育った今年の蕎麦

時の経つのは早いもので、もう12月も半ばです。例年当店では、12月初めから新蕎麦のご提供が始まるのですが、今年は12月になってもまだ収穫が終わらず、ご提供が遅くなってしまいました。今年も、すったもんだはありましたが、大きな事故や怪我もなく無事作業を終えられたことを喜ばしく思っています。

思い起こすと今年は、土作りの段階で早くもトラクターが故障するというアクシデントがあり、思うように種蒔き作業が進みませんでした。それでも、近年酷暑が続いていますから、遅れても影響はないと考えていました。途中、何度となく畑の様子を見て回り、そして周りの草刈りや獣害除けの電気柵を設置したり、できる限りの準備を整え、無事収穫の時を迎えられるよう備えました。今年は、台風被害もなく、順調に育っていく蕎麦を眺めては、安堵と期待に胸を膨ませたものです。

その甲斐あってか、11月初めの収穫作業の前半戦では収量も上がり、豊作を喜ばしく噛み締めていました。種に夢を乗せて蒔き、実現した夢と共に実を刈り取る。暑さに耐え忍んだ夏の作業が報われた瞬間です。

この流れのまま、順調に進むことを願いつつ収穫していきました。


そこで目にした、信じがたい光景

しかし願いは空しく、11月の半ばあたりから急激に冷え込むようになり、9月半ばを過ぎてから蒔いた蕎麦は、成熟期に成長が鈍化してしまうという結果になってしまいました。通常、蕎麦は種蒔きから2ヶ月ほどで収穫となりますが、2ヶ月を過ぎても実の黒化がなかなか進まない状況にヤキモキします。

そうこうしながら、12月に入ってようやく最後の収穫を迎えることとなりました。しかし、そこで目にした光景は驚くべきものでした。猪の襲撃です。

数日前に見た時はそれほどでもなかったのに、1,500坪の畑が見渡す限り食い荒らされています。初めは現実が受け入れられず、何が起こっているのか理解できませんでした。

少しの間を置いて、ようやく状況が飲み込めるようになると、今度は絶望と悔しさが溢れてきます。「汗と埃にまみれながら、必死に土を耕し、肥料を蒔き、種を蒔いた。早めに電気柵を設置して、きっちり猪対策もした。にもかかわらず、最後にこの仕打ちか。」

私がどんなに打ちひしがれようと、そこにはいつもと変わらず日差しがあり、風が吹いていたのを覚えています。自然とはまったく容赦のないものです。良くも悪くもただそこにある。それだけです。


残ったのは、10kgという現実

気を取り直して、残っていそうなところを祈る気持ちで刈ってみましたが、結局穫れたのはたったの10kgでした。少なくとも300kgは穫りたいと思っていただけに、この結果は完全に心が折れるレベルです。

報われない思いと折れそうな心を一旦外に追いやり、原因は何だったのか、と考えたところ、全ての要因が一本の線につながって見えてきました。
原因は、種蒔きが遅れたこと、これに尽きます。

11月半ばからの急激な冷え込みで、発育に遅れが生じ、収穫時期が12月になってしまった。さらに今年は、猛暑で山に動物の食べ物がない。全国的に熊の出没も頻発している。冬が近づくほどさらに食べ物がない。

そんな折、目の前に収穫を控えた蕎麦畑が広がっていたら——食べられるに決まっています。まさしくチーンのやつです。

毎年、いくらか猪の被害はありますが、今年ほど荒らされたことがなかったのは、まだ山に動物たちの食べ物があるうちに収穫が終えられたからではないか、などと考え至ります。

今年、このような結果になると分かっていれば、早く種を蒔き終えたかもしれません。しかし現実には、序盤から機械のトラブルがありました。夏の繁忙期の店も回さなくてはなりません。

そして種蒔きを遅らせた最大の理由は、酷暑は蕎麦の実の付きが悪くなるためです。考えれば考えるほど、今年はこれがベストな判断であったと思えてなりません。

どうやら今年は、貴重な教訓を得る年だったようです。来年も、また蕎麦を作ります。

今日もありがとうございます。

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